法律家 lawyer 2004 4 5
今日の新聞には、法科大学院の入学式の様子が記事としてあります。
ただ、多くの新聞を読んで、気づいたことがあります。
それは、法律家を、たくさん作って、そして、将来は、どうするのか。
そういう視点がなかったのかもしれない。
誰も言わないならば、ここで、あえて苦言を表明したい。
それは、「法律家は、何も生産しない」ということです。
アメリカでは、
法律家天国が行き過ぎたと考えています。
今や、「訴訟天国」から、「訴訟地獄」となっています。
医者が、訴訟を恐れて、うっかり治療すらできない状況も出現しています。
しかし、こうでもしないと、
たくさんいる法律家たちは、食べていけないからです。
社会が平和で、何も紛争がなければ、
法律家に仕事はありません。
仕事がなくなれば、何か事件が起きないかと期待するものです。
それも、民事事件です。
刑事事件では儲かりません。
社会が平和で、紛争もない社会で食べていける法律家は、
公務員である裁判官と検事だけです。
ともかく、法科大学院の将来像が見えてきません。
アメリカのように、訴訟天国として、
「法律家の食べていく社会」を作るのか。
あるいは、弱者の権利保護を仕事ととして、生きるのか。
しかし、弱者の権利保護では儲かりませんので、
法律家として食べていけません。
何か別のアルバイトをして食べていくしかないのです。
(アドバイス advices)
新聞を読んでいたら、
これを、「日本版のロースクール」と呼ぶのでしょうか、
法律系の大学院についての記事が、多かったですね。
ここで、ひとつ忠告をしておきたいと思います。
私が卒業した大学でも、多数の司法試験合格者を輩出していました。
なかには、在学中に、司法試験に合格する学生もいました。
しかし、彼らは、決して喜んでいませんでした。
数多くの先輩の話を聞いて、
たとえ、司法試験に合格しても、
やっと、スタート時点に立ったのだと、身を引き締めていました。
裁判官や検事になるならばともかく、
基本的に、弁護士というものは、自営業です。
だから、生活の保障はありません。
弁護士というのは、あくまでも、法律家としての資格を得ただけです。
弁護士に必要なのは、「営業力」と「交渉能力」です。
弁護士として食べて行くには、顧客を開拓していく必要があります。
だから、たいていの人は、大手の弁護士事務所に勤務するのです。
これは、弁護士のサラリーマン化と言えます。
しかし、普通のサラリーマンよりも、
きびしい労働条件となるでしょう。
弁護士事務所には、労働組合がありません。
普通のサラリーマンならば、労働基準法が守ってくれますが、
弁護士には、なかなか、労働者の権利を主張できない雰囲気があります。
あるいは、弁護士事務所で、サラリーマンのように働くのが嫌で、
地元で、弁護士を開業しようと考える人がいるかもしれません。
運よく、親が金持ちで、親の資金で、
弁護士事務所を開けると考えている人もいるでしょう。
しかし、たとえ、お金があっても、弁護士事務所を開けない可能性があります。
地方では、地元の有力な弁護士の「縄張り」があります。
だから、そういう弁護士の「縄張り」を「のれん分け」してもらわないと、
弁護士事務所を開けない可能性があります。
こういうことを聞くと、前途多難だと思うでしょうが、
数多くの困難を乗り越えていけるのが、若者です。
若者が失敗しても、誰も非難しません。
これは、若者の特権です。
若いうちに、数多くの失敗を経験した人が、やがて、大樹となるのです。